私と二人の物語
少しして、会いたかった森山悟が降りてきた。

「いらっしゃいませ」

暖簾をくぐって出てきた彼は茶髪で、篠田には一見軽そうな雰囲気に感じた。

「どうも。これなんですけど」

「あ、それですか。実はそれ、カレイドスコープなんです」

「え?これ、万華鏡?」

「はい。ちょっといいですか?」

篠田はそれを悟に渡した。

「これ、両側は蓋になっているんです」

そう言って彼は、両側を回し始めた。

「ああ、そこが回ったんですね」

「ええ。はい、これで覗けます」

彼は蓋を取ったカレイドスコープを篠田に渡した。

篠田は、明るいランプの方に向けて中を覗いた。

「おお、これは…」

「結構複雑でしょ?」

「ええ、そうですね。普通のよりかなり」

「これ18世紀中頃の作品なんです」

「え?そんなに古いんですか?」

「そうですね。カレイドスコープ自体は18世紀初頭に発明されていますから、それから少し発達して、ちょうどいろいろ造られていた頃の作品みたいです」

篠田はそれが置かれていたところの値札を見てみたが、なるほど、それなりの値段だった。
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