鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》

「…!!」


そこには、眉間に深い皺が刻まれている社長の顔。


「俺が何にも感じてないとでも言うのか?」


切なそうな苦しそうなその顔は、男の人の顔で。
あ、と思った時にはその顔が目の前に迫っていて、声にならない声が出る。



「お前本当バカだな。こんな分かりやすい奴いないだろ。」

「…っっ」


声にならない声は、社長の綺麗な唇に飲み込まれた。
唇に熱を感じ、キスされてるのだと分かる。



「んっ…」


角度を変え深くなるキスに、抵抗しようにも力が入らない。

やっとの思いで厚い胸板を押して逃れ、はぁはぁと肩で息をしながら睨みつける。


「…そんな顔して煽るお前が悪い。」

「ちょ、まっ…んっっ」


解放されたと思ったらまた唇は奪われ、言い返す事すら出来ない。

段々意識がぼーっとしてきて、もうどうにでもなれと思えてしまう。

それ程に、甘く優しいキス。
何だか自分が愛されてるんだと勘違いしてしまいそうになる。


それからしばらくキスは続き、お湯のせいか二人のものなのかわからない熱にのぼせた私は、とうとう意識を失ってしまった。
< 29 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop