鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
そうか、と返事はしてくれたが、納得していない様子でこちらを見てくる社長。


「社長、本日のご予定は?」

何とか話を逸らさなくては。
何も考えないように仕事をさせてほしい。


「今日はパーティがある。大事な発表もする予定だ。」


大事な発表…で連想される事は一つしかない。

強引でいつも突然な彼は、私に受け止める時間すらくれないみたいだ。


「ではいつものお店でネクタイを新調なさいますか?」

「いや、今日は必要ない。」


特別な日だから、今日は婚約者に選んでもらうのだろうか。
私の仕事はそうやって減っていくのかもしれないな。


「今日はこの店に行って、注文したものを受け取って来てくれ。」


そう言って渡されたのは二枚の受取票。
一つは知らないお店だったが、一つは私でも知ってる有名ジュエリーショップのもの。

嫌な予感しかしない。


「わかりました。」

「受け取ったらその足でプレジデンスホテルに向かえ。」


おそらくそこはパーティの会場だろう。

好きな人の好きな人への指輪を受け取り、それを渡す婚約発表の場に持って行く…
それが私に与えられた仕事だった。
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