溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


『だから……あたしの魔法で、アンタとお姫様をまたくっつけたいと思ってるの。結局アンタたちの間にある一番の障害は身分の差だと思うから、アンタをどこかの王子に仕立て上げるとか、逆にお姫様を町娘にしちゃうとか。方法はいくらでもあるんだから』


リリィは自信満々に自分の胸を叩いて見せた。早く、エマとフィリップを元通りにして、幸せになるところが見たい。それは自分だけでなく、魔女仲間みんなの願い。

きっと本人たちだってそれを望んでいるはずだと、信じて疑わなかったリリィだけど……。


『きみの魔法って……たとえば、人の気持ち……内面をどうにかすることはできるの?』

『あったり前でしょ! そんなの朝飯前よ。……でも、今回の場合は必要ないんじゃないの? 今でもアンタはお姫様が好きで、お姫様もアンタが好きなんだから』


フィリップが何をして欲しいのかわからずに首を傾げるリリィ。そんな彼女に、フィリップは静かな、けれどハッキリとした口調で、彼の願いを口にした。







「エマの中の……僕に関する記憶と、抱く感情。その全部を、消してくれないか?」


私がその台詞を目で追っていたその瞬間、同じ部分を臨場感たっぷりに音読する声が。同時に急に背後から肩に腕を回され、ぎゅう、と抱きしめられた。

背中にぴたりとくっついた熱とすでに嗅ぎなれた彼の香水の香りにドキドキして、本を落っことしそうになる。

れ、蓮人……! いつの間に帰ってきたの!?


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