恋ノ音
突然のことに、病室の空気が固まった。

｢え…なんだよこの雰囲気、母さん、この人たち、誰？｣

｢拓？この人たちはあなたの従兄弟の桜ちゃんと、武瑠くんだよ？｣

｢知らねーよ、そんな人。母さん、騙されてんじゃねーの？｣

その言葉たちは私たちの傷をえぐるには充分だった。

｢ご家族の方、ちょっといいですか。｣

その時、現れた医師に拓の記憶喪失について告げられた。

拓の場合、何か精神的ショックがあったために、記憶がなくなった。
しかも、誰のことを覚えているのか、どういうことは忘れているのかも、
分からなかった。

その後、拓は私たちが赴任した白蘭高校に転校した。
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