もう泣いてもいいよね
「そうだ!子守花を見に行こうよ!」

私はタケルの手を取って言った。

「え?」

タケルは、見に行くことと、手を握られたことと、どちらにかわからないが、戸惑った顔をした。

「そうだね~やっぱり実物見に行こうか」

香澄も大賛成だった。

「あそこに行くのか?」

「大丈夫だよ」

香澄はタケルに微笑んだ。


「なに、嫌なの?」

私は、タケルが離そうとする手を離さないで、さらにぐっと握った。

「わかったよ…」

どうやら、渋々承知した。

私は手を離した。

「仕方ないな。おれ、場所を知ってるしな」

タケルが手を離してもらって安心したのか、ちょっと自慢げになった。

「うん、そうだね。案内してよ」

「よし!そうと決まったらさっそく行こうぜ」

タケルが意気揚々と部屋を出て行こうとしたが、香澄が言った。

「満月の夜しか咲かないよ」

「あ、そうだった…」


満月まではあと1週間くらいある。


そっか、あの日、父さんが死んだ日も、確かに満月だった。


「じゃあ、今日はせっかくだから、残りの本を調べていこうよ」

私はファイルを戻し、新しい本を取り出した。

「じゃあ、また調べるか」

「はいよ」

二人もまた調べ始めたのだった。



「終わったぁ~」

タケルが床に座り込んで後ろに手をつき、天井を見上げる感じで言った。

「でも、子守花のこと、あのファイルにしか書かれてなかったね」

私も最後の本を棚に戻すと香澄の方を見た。

「そうだね…ここでもわからないとすると、後はどこで調べればいいんだろう?」

香澄もぺたんと女の子座りをして途方に暮れたような表情だ。


「もういいよ」

「え?」

私の言葉に二人が振り向いた。
 
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