黄金のラドゥール
警戒、そう言う点では、私は今回のハルについてはかなり特別扱いをしている。
『なぜハルには警戒しないのかー、、
それは出会いからして唐突で異例だったから、としか自分でも説明がつかない。あの時、ハルが落ちて来ていなければ、今おそらく自分はここにいなかっただろう。』

コウジュンはひとりソファへと歩き出した。

ハルには、驚かされてばかりだ。
時折、私を皇子とすら思っていないような対応にも驚かされる。

それはハルがこの国の者ではなく、本当に天から来たからだろうか?

煌びやかな衣装に包まれれば、なるほどどこかの国の姫のように美しい。だが、彼女の思っていることは見て取れることと同じだと思われる。感情を隠すことも偽ることもなく、
それでは一国の姫など、ましてやどこかの間者など務められるはずもない。

皇子である私に仕えるでもなく、媚びるでもない。

皇子である私をなんだと思っているのだろう?

皇子である私を?



「急に近くで声がしたから、

それで、驚いてしまって、、」
ハルはフルフルと首を左右に振った。



『近すぎる』と驚いて泣きそうになったり震える女には会ったことがなかった。

抑えようのない笑いが込み上げてきた。


「コウジュン?」

コウジュンは声をあげて笑った。

ハルは何故笑っているのかわからないという顔をしている。

「本当によく似合っている。
皆に見せるのが楽しみでならない。」

「皆?その一緒に行くところのこと?」

「舞踏会ではないがな。」
コウジュンはわざと微笑んで見せた。

「、、?!さっきの、、見てたの?!」
目の前のハルはまた真っ赤になってくちをぱくぱくさせている。
コウジュンは可笑しそうに声をあげて笑った。


守ると心に決めていた。
いつ、どこの誰というわけではなかったが、漠然と。いつか自分が妃を娶る時には、自分は生涯をそのひとりの妃だけに捧げ、守っていくのだと心に決めていた。
もしかすると妄想だったのかもしれない。
不憫な亡き母への。




ーー、、もう少し、傍でこの娘がどんな反応をするのか見ていたいと思った。
< 45 / 238 >

この作品をシェア

pagetop