沢山の初めて
「もう一度だけチャンスをくれ、雛菊(ひなき)!」

……あら。

私の名前、初めて呼ばれました。

知ってたことに驚きです。

『名前、知ってたんですね。』

「当たり前だっ。大事な奥さんの名前だからな。」

『そんなこと言って、私が戻ったらまた前に戻るんでしょう?』

手に入ってしまえば、きっとまた同じことの繰り返しでしょう?

(元)旦那様は悲しそうに、私の腕を掴み懇願します。

「繰り返さないよ。一人であの家にいるのはツラい。雛菊がいないと、何を食べても味がしない。何にもする気が起きない。頼む、戻ってほしい…。」

泣きそうだわ、この人。

ふぅ…って小さくため息が出ました。

それにビクッとなる(元になるはずだった)旦那様。

『…私、性格上、浮気されても浮気できません。』

「わかってる!オレももうできない!しようとも思えない!」

『愛人もいりません。』

「オレもいないし、本当に愛人はいないんだ!今は無理でも、これから信用してもらえるよう頑張るから、信じてくれ。」

『私、可愛い子供が欲しいんです。』

「オレも雛菊との子供が沢山欲しいぞ!」

『幸せな家庭で育てたいんです。』

「努力する!雛菊も子供もオレも幸せになるように!」
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