【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「電話してきてもいいが……
ここで話せることなら、べつに遠慮しなくていいぞ」
「……あ、じゃあここで電話します」
なんの用件なのかは知らないけど。
着信だけでメッセージは送られてきてないし、急ぎでもないのかもしれない。でも着信の折り返しはしておいた方がいいわよね、と電話すれば。
『あ、南々瀬?
悪いな、いそがしいのに急に電話して』
「ううん。
電話なんてめずらしいからびっくりしたけど、どうかしたの?」
『どうか……、んー……そう、だな……』
どことなく言いづらそうな大和。
大和にては歯切れが悪い。めずらしいなと返事を待っていれば、『あのさ』とはっきりした声のあと。
『……今度デートしねえ?』
「……ふたりで?」
『……そう、ふたりで』
……これってみさとに悪い、わよね?
わたしはもう大和に気があるわけじゃないし、ロスに旅立つ前に彼に告白された時もまさかこんな短期間で帰国するとは思わなくて返事はしなかった。
『ほら、南々瀬ロイヤル部入ったしさ。
いっしょにいられる時間、必然的に減ったじゃん』
だからだめ?って。
もっともらしい理由を述べられてしまうと、ことわるのも不自然に感じる。
読みかけの文庫本の表紙をまた意味もなく見つめてから、「わかった」と返事した。
どうして急に電話で誘ってきたんだろうと思いながら、電話を終えて顔を上げる。……と。