【完】こちら王宮学園ロイヤル部



いつみはその女の子のことを、一目惚れに近い状態で好きになった。

だけど相手の女の子は結局その後会場に一度も姿を現わすことがなかったため、俺はその子の顔を知らない。



そして、すごく肝心なことがひとつ。

そのパーティーが何のパーティーだったのかを、俺もいつみも全く覚えていなかった。ふたりとも父親に聞いたけど、「そんなの覚えてない」と言われてしまったし。



そのせいで、手がかりは俺がいつみに教えてもらったそれだけ。

しかもその中で本人に関わる手がかりは「姫」と「ひとつ年下くらいの女の子」のふたつ。



まじでふざけんじゃねえぞ、って思ったけど。

いつみはずっとその子のことを想ってた。──何年も、ずっと、褪せることなく。



「……それを知ってる分、いつみに余計な女が近づいたら困るでしょ?

だからいくみ姉のこともちょうどキッカケになって、あたしが女装した。そしたら案の定、いつみに近寄る女の子は減ってくれた」



「割と現実的な理由で驚いてるんですけど」



当たり前だ。

まさか女装してる理由のひとつが幼なじみの女除けだとは思わないだろう。あたしも何してんだろうって未だに思うぐらいだし。




「……まあ、いくみ姉のことがあったから、だけどね。

いつみだけのためにあたしが女装するわけないじゃない」



「……そうですよね」



「で、まあそういうわけであたしは女装してんだけど。

生徒会をわざわざロイヤル部に改名したのは、そっちの方がただの生徒会よりも知名度が上がると思ったから」



王学の生徒会執行部じゃ、絶対にその子には届かない。

だけど王学のロイヤル部、とまで名前を変えれば、「ロイヤル部?なにそれ」と思わず気になる人もいるだろうと思ってのことだ。



それが今年まで動き出せなかったのは、去年まで生徒会長が別にいたから。

俺らが3年になるまで待たなきゃいけない必要があって……ロイヤル部は、もともと『珠王』と『女王』だけで構成される予定だった。



偶然にも『騎士』なんていうそれっぽいのが増えて。

まさか、1年まで見事にロイヤルな感じになるとは思わなかったけど。



別の意味でロイヤルフラッシュだわ。



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