【完】こちら王宮学園ロイヤル部
……されたのか。
まあ、言われなくても全員が、夕陽の矢印が南々瀬に向いていることは知ってたけどな。
「……いつ、いわれたの?」
「さっき。
やっとお互いに、前に進む覚悟ができたのよ」
「はあ?
あいつ俺の告白の邪魔したくせに、ちゃっかり自分は告って……、あ、」
やべ……と、椛の言葉が萎んでいく。
……いまこいつ"告白邪魔された"っつった?
「……椛先輩。
飲み物買いに行って家の話をしたってことは聞きましたけど、告白の話は聞いてませんよ」
ぎゅっとルノが眉間を寄せているが、それより問題は「え……」とフリーズしている南々瀬だ。
「南々瀬」と声をかけたら頼りない瞳と目があって、数秒後には両手で顔を覆ってしまった。手のひらの隙間から見える頰が赤い。
「よりによって最悪のバレ方じゃねえかよ……
あ〜、も、ごめん。いまの忘れて。っていうかもうさっきの一連の流れもぜんぶ忘れて」
「……っ」
「忘れて聞かなかったことにして。
返事とか余計なことも何も考えねえこと。おっけ?」
「……なに。自分でバラしたわけ?
ばかじゃないの? ……ざまあ」
「元はと言えばお前が邪魔したことからはじまったんだよ。責任取れマジで。
あともう俺は遊んでねえから人妻とか言うなよ。それ禁句だからな」
自ら暴露するハメになった椛と、もどってきた夕陽がぎゃあぎゃあと言い合う。
それを見て呆れたようにため息をついた夕帆が、「うるさい」と低い声で一蹴したかと思うと、逃げるようにして夕陽が撮影を再開させた。
頰を完全に赤らめて黙り込んだ南々瀬。
いつみも、椛も、ルノも、夕陽まで。虜にしてしまう南々瀬の、その瞳がうつす、特別な対象が。……ほんのすこしだけ、気になった。