promise
想羽くん特製のケーキを片手に、わたしが駆け足で目指した場所。
「優羽っ」
ぼんやり立ち尽くしていた優羽の名前を呼び、その右腕にぴったりと抱き付いた。
「……光来」
わたしの名前を呼んで微笑む優羽が、冷えた手で赤くなった頬に触れる。
あの手術の後。
優羽を苦しめた腫瘍は後遺症も無く優羽の中から消え去った。
優羽の右目の視力と共に……。
「そっちに居たら光来が見えないんだけど」
「だからよっ。じゃないと優羽はわたしにベタベタ触るからね」
拗ねたように呟いた優羽にかまわず、わたしは優羽の右手をしっかりと握り締めた。
「……見えなくてもわかるよ? 光来のことは俺が一番よく知ってるからね」
「はぁ……バカ」
悪戯っぽく笑った優羽が空いた左手をわたしの胸元に伸ばしてくる。
全く油断も隙もない……。
それでも。
こうして優羽が隣で笑ってくれてる今が……わたしには掛け替えの無い大切なもの。
だって。
こうして優羽と笑って居られるようになるまでには、沢山の時間がかかったから。