シンデレラの魔法は解けない






「平さん……短い間でしたが、ありがとうございました」




努めて笑顔でお礼を言おうとするのに、泣きそうになってしまう。

平さんと一緒に過ごした数日間、すごく楽しかった。

優しくてオトナでかっこいい平さんに、こうも惹かれていたんだ。




必死に平静を装うあたしに、平さんは告げる。




「俺こそありがとう。

俺も楽しかったよ」




その言葉に愕然とする。

心のどこかで、平さんが引き止めてくれるかと思っていた。

だけど、平さんはあっさりと別れを告げる。

所詮、そこまでの女だったのだ。

いいオトコの平さんには、もっといいオンナが相応しいという訳か。

こうしてあたしの新たな恋も、見事に砕け散ったのだ。


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