染 光 ハナビ
線香花火
「染谷くんっ、こんばんは…!」
急いで玄関を出ると、
見慣れない私服姿の染谷(そめや)くんがいた。
いつもの制服じゃない姿に。
久しぶりに見る、染谷くんの姿に。
こんなにも胸が鳴るなんて本当に、
どうかしている。
「ぴっか、寝てた?ごめんな起こして」
自転車のスタンドを降ろしながら困ったように微笑む染谷くん。
ちょっとだけ息を切らしていて、もしかして急いで来てくれたのかなって胸がぎゅってなる。
「大丈夫だよ!こちらこそバイト終わりにごめんね。わざわざありがとう」
「や、急に線香花火しようなんて
なんかあったのかなって思って心配した」
…心配。してくれたんだ。
胸の奥が、いっきに甘くなるのを感じる。
「なんにもないよ!ほら、染谷くん花火したいって言ってたでしょう?どうかなぁ、って」
「言ったけど…なんで線香花火だけなの」
クスクスと笑いながら、私の右手にぶら下がったスーパーの袋を覗き込む染谷くん。
「普通手持ち花火じゃね」
「れいがね…!あ、れいって弟なんだけど、あの子いつも決まって線香花火だけやらずに残すからいっぱい余っちゃって」
「ぷ。なんだそれ」