インタビューはくちづけの後で
「何も知らずに、ここにいてすみませんでした。
…でも、私はここで仕事がしたいです。」とすがる思いでユリさんを見つめると、

「いまではグループのみんなはわかってるわよ。
あなたはここのグループにふさわしい新人だって。だから、安心してシゴかれてください。
あなたが何にも知らずに許婚になって、ここに勤めることになって、
ついこの間ジュニアに出会ったって事は…
斎藤さんが頭をかかえてたもの。ジュニアが飛ばしすぎだって。」とクスクス笑った。


そう。絶対に飛ばしすぎだ。

私もそう思う。


「さて、午後も忙しいわよ。ビシビシしごくから、ついて来なさい。」と私の顔を見たので、

「はい!」と大きな声で返事をし、トレイを持ったユリさんに付いて行った。


午後の会議を2つこなし、グループ内の打ち合わせを終えると、もう、20時を過ぎている。

「小柳さん、もう、君はやる事はない。上がって。」と斎藤課長に言われ、
「ハイ」と返事をして片付けを始める。私ごときが残業代を無駄に付けるわけにはいかない。


…そういえば…今日は副社長の顔を見なかった…と思いつく。

2日間。強引に密着されっぱなしだったのに…

いや、社内報の仕事がないんだから当然か…

…急に姿が見えなくて驚くなんて…どうかしてる。

「お先に失礼します。」と言って

頭を振りながら、広報部を後にした。



下に降りると、運転手の高木さんが私を待っていて、

少しほっとしたけれど、

車の中にはまた、副社長の姿がなかった。





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