不埒な専務はおねだーりん

「無理無理!!専務の秘書なんて絶対に無理!!」

ホントホント、マジで無理なんでー!!

壊れたおもちゃのように何度も首を横に振って、必死になって訴える。

バリバリのキャリアウーマンならいざ知らず、ただの事務職の小娘がいきなり専務秘書って冗談もほどほどにせんかーい!!と慣れないノリ突っ込みまでかましてしまうほどに私は動揺していた。

「大丈夫、大丈夫。あいつの扱い方なんてその辺の犬っころと大して変わらないぞ」

ハッハッハといかにも大袈裟に笑うのは決して私を安心させるためではない。発破をかけて追い詰めるためだ。

いくらお兄ちゃんでも自分の上司を“あいつ”呼ばわりした挙句に、犬と一緒にするのはどうかと思う……。

根拠のないでまかせばかりを口にする兄に次第にうんざりしてくる。

「……それに、全く知らない仲ってわけでもないだろう?」

「それはそうだけど……」

唯一の弱みを指摘されるとううっと言葉に詰まってしまい、お兄ちゃんから目を逸らす。確かにお兄ちゃんの言う通り“あの人”とは知らない仲ではない。

というか、むしろ知り過ぎている仲というか、なんというか……。

だからこそ余計に遠慮したいというか、なんといいますか……。

ああ!!わが兄ながら人の弱みを正確に突いてくるなんて、いやらしいにも程がある!!


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