不埒な専務はおねだーりん

「かずさは遼平とハグするのかい?」

「しませんけど……」

お兄ちゃんとハグだなんて想像しただけで、うええっと吐き気がこみ上げてくる。

「つまり、そういうことさ」

「はあ……」

「僕はね。かずさが世界で一番大好きなんだよ」

「あ、ありがとうございます……」

結局、“そういうこと”がどういうことだかさっぱり分からなかったけど、“大好き”と言われて嬉しくないはずがない。

「ははは。その様子だと信じてないな?」

不機嫌になった子供をあやすようにわしわしと頭を撫でられると、やっぱりからかわれていたんだとやさぐれたくなる。

「それじゃあ、明日の朝7時に迎えに来るからね」

篤典さんは爽やかさ100パーセントの微笑みで言うと、チュッと頬にキスを残して帰っていったのだった。

(び、びび、びっくりした!!)

不意打ちのようなほっぺチューの効果は絶大だった。

びっくりしすぎて迎えに来ると宣言されたことが、どこかへ吹っ飛んでいってしまった。

いくら海外では挨拶みたいなものでも、日本ではキスとは友達以上の親密な関係を表す。

(妹じゃなければ……何なの?)

キスをされた頬が熱くなっていく。

(やだ……っ……)

私ってば……うっかり勘違いしそうになっている?

< 27 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop