不埒な専務はおねだーりん

「な、何しに来たんですか!?」

「護衛さ。嘉子さんはうちの母上と軽井沢に行ったんだろう?遼平も入院中だし、かずさひとりだと物騒かと思って」

篤典さんは己の正当性を主張すると、靴を脱ぎ、勝手にうら若き乙女の部屋に降り立った。

「まあ、かずさに一番不埒な思いを抱いているのは僕だけどね」

舌をペロリと出しておどけられると、ガクーっと身体から力が抜けた。

(フットワーク軽すぎ!!)

お坊ちゃまなんだから、少しは汚れるのを嫌がってください!!

「お、お気持ちは嬉しいですけど夜中に訪ねてこられたら困ります……!!」

もし足を踏み外して木から落ちていたら、ケガだけでは済まないかもしれない。

「私なんかのためにこんな危ない真似をしないでくださいよ」

「“私なんか”と自分を卑下するのは頂けないな」

篤典さんに有無を言わさぬ強い口調でたしなめられるのは初めてだった。

「ごめんなさい……」

思わずシュンとなって謝ると、篤典さんは頭を撫でて許してくれた。

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