キミが可愛いわけがない
─────ガチャッ
鍵が開けっ放しになっていた玄関のドアを少し乱暴に開けてから、横殴りの雨で濡れた制服のまま、ユズの部屋のある2階へと上がる。
よかった。
部屋にはちゃんと戻れたみたいだ。
って。
もともと俺よりもユズの方が体強かったりしたもんな。
そんな心配しなくても大丈夫だろうという気持ちと、やっぱりあのユズのことだから強がったりしてるんじゃないかと不安になりながら、ユズとプレートがかけられたドアの前に立つ。
うわ。
まって、俺濡れてんじゃん。
しかも、ユズはゴリラだけど一応女子の部屋なわけだし、勝手に入っていいもん?
よく考えてみたら、ユズが俺の部屋に無断に入ることはあっても、年頃になってからなんとなくユズの部屋を行き来することはしなくなってたかも。
なんか、急に変に意識しすぎてるよ俺。
そういえば、俺がまだ自分の気持ちに気付いていなかった時でも、周りの家族たちは「一応女の子なんだから」という空気を作っていたっけ。
だから、この部屋には長らく入っていない。