キミが可愛いわけがない


だからって、簡単に諦めれるものでもなくて。


「振られることはわかってたよ。有馬くんが本気でユズちゃんのこと好きなのも知ってた。ずっと見てたし」


「うん」


「でもだからって、諦めないっ!」


「おぉ。ミスちゃん結構肉食なんだね〜」


だってもう、好きだって、好きすぎだって思っちゃったんだもん。


「絶対に、私と付き合いたいって、有馬くんの口から言わせてやるもんね!」


「へぇ〜」


見下すようその笑い方にさえキュンとして。


こんなに間近で彼を見て、改めて惚れる。


───ガタッ


突然、椅子から立ち上がった有馬くんは、私の横を通り過ぎて、そのまま音楽室を出ようとした。


諦めないって、どうするのよ私。


そう、自分の言ったセリフを恥ずかしくなって後悔した時────。




「じゃあ、落とされるの楽しみにしてるから……咲菜」



彼は少し意地悪に片方の口角を上げて笑ってから、音楽室を後にした。



「っ……!!」



単純なのかもしれない。


笑われるのかもしれない。


バカだって言われるかもしれない。


けどそれでもいい。



今日────────。


初めて彼に、


大好きな彼に、



「さ、咲菜って…言った…」



名前を呼ばれた。



それだけで、



この世界で誰よりも幸せものだって思えるくらいすごくすごく嬉しくて。



「絶対、落とすもんっ!」


月明かりに照らされたピアノの横で、


ごちゃごちゃの感情になった涙を流して、


久しぶりに


ありのままの自分で思い切り笑えた気がした。









───end────



< 238 / 238 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:77

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

【短編】ファースト・キスはあなたの部屋で

総文字数/3,072

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
いつもの部屋。 いつもの匂い。 いつもの彼。 土曜日の午後3時。 毎週決まって向かうその部屋で。 「…キス、したことある?」 『さぁ』 「どんな感じなのかな?」 『…どんな感じって…そりゃ…』
【短編】弱った君が愛おしい

総文字数/4,909

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
口が悪くて意地悪で いつもは最低最悪の幼なじみだけど… 今日、そんな幼なじみが風邪をひいた。 「…うぅ、だりぃ」 いつもは大嫌いだけど、 「…それは、食べられる」 潤んだ瞳でゼリーを見つめる 弱った君は、 今日だけすごく愛おしいんだ。
【短編】くすぐって真夏日

総文字数/9,302

恋愛(純愛)23ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
キミの手首を掴んだのを、 外の気温のせいにする

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop