キミが可愛いわけがない
(side 芽郁)


「ちょっと、芽郁」


若松が帰ってすぐほっぺたをぷくーと膨らませたユズが不機嫌な声で俺の名前を呼んだ。


「…なに?」


教科書をパラパラめくって読んでるふりをしながら聞き返す。


「咲菜、本当に私と友達になりたいとか言ったの?」


っ?!


さすがユズ。
そういうとこには敏感なんだな。
俺の気持ちには疎いくせに。


「なんだよそれ。言ったよ。じゃなきゃわざわざ今日みたいに場所用意したりしない」


平然を装って。
自然に。


「でもさ…」


ユズがこれから言うことは大体予想できる。


「女の子なんか裏切っちゃうなんて思ってる子だよ?なんで私なんかと友達になりたがるわけ?」



ユズの疑いは正しい。
それもそうだよな…。
今日の若松は暴走しすぎていた。
まさかあんなこと言うなんて、俺も予想していなかったし。


まぁ、本人も後で気付いて反省した顔をしていたけど。



「それは…あれだ」



なんかそれっぽいこと言わねーと。



うっ、

横目でユズを確認すれば、真剣な眼差しでこちらを凝視している。



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