私のご主人様Ⅳ

体が重い。また眠ってしまいそうになるのを堪え、ベッドから降りる。

寝たら、琴音が遠くにいってしまう。そんな、気がして眠れない。

「お兄ちゃん!ダメだよ!」

「…こと、ね…の、手術……しつ、は……」

「ダメですよ。怪我人が無理したら」

部屋に響いた聞き慣れない声に顔を向ける。

部屋のドアを潜ってきたのは、最善を尽くすと言ったあの医者だった。

「全身打撲に、喉まで火傷してるんです。ちゃんと寝ててください」

「っ………こ、とね………は」

こいつが出てきたってことは、琴音の手術は終わったってことなのか。無事なのか、怪我の具合は…。

聞きたいことは山ほどあるのに声にならねぇ。声を出そうとするだけでも喉が張り裂けそうになる。

医者の顔は変わらなかった。

「…一命はとりとめました。しかし、いつどうなるか分かりません。今夜が峠でしょう」

医者の言葉に空気が凍りつく。

琴音が死ぬかもしれない。頭によぎるそれを振り払うことすら、ままならない。
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