蜜月なカノジョ(番外編追加)



「丸山さん、5番テーブルお願いします」
「はい」

集団のお客様が帰ったテーブルには大量の食器が残されている。てきぱきと片付けなければ結構な時間がかかってしまいそうだ。

ボヌールはオープンから4年近くが経つというのに、今でも時間帯によっては並ぶ人がいるほどの人気店だ。
味はもちろんオシャレな内装と、何よりもスタッフの細部まで行き届いたサービスが評判だった。働いてる人間が言うのもどうかと思うけど、実際私自身も客としてここに足を運んでいたときから身をもってそれを実感していた。

ナオさんや葵さんと出会って、それが彼らの努力の賜物なのだと気付くまではあっという間だった。ここで働きたいと言う人は後を絶たないし、重ね重ね自分は何て幸運な人間なのだろうと痛感する。


「ねぇ、昨日彼から別れたいって言われちゃった」
「えぇっ、何でよ?! ついこないだまでラブラブだっつってたじゃん」
「それがさ~、ずっとHするのを拒んでたら…俺のこと好きじゃないんだろ?って言われちゃって」
「はぁ~っ?!」

その時、背後から聞こえてきた会話にピクッと手が止まった。

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