蜜月なカノジョ(番外編追加)

「あ、杏っ!! 待って、落ち着いてっ!!!」
「いやああぁああああっ!!!」

「杏ちゃんっ、お願いっ、話を聞いて! これには事情が…!」
「いやああああっ! 触らないでぇっっっっっっ!!!!!」

肩に触れた手に激しい拒絶反応を示した私に、目の前にいた人物、…ナオさんの声をした男の人がビクッと止まった。
一瞬だけ見えたその顔は酷く傷ついてるように見えた。

…けれど、わけのわからないこの状況を目の当たりにした私にそれを冷静に受け止める余裕なんかあるはずもなく。

「う゛っ…!」
「あ、杏っ……あっ、待って! お願い、待ってちょうだいっ!!!」

とにかくこの状況から逃げ出したくて。
とにかく目の前にいる「男という生物」から離れたくて。

ぼろんぼろん溢れ出す涙を拭うこともせず、必死に呼び止める声を耳に入れることもせず、私はただひたすら全力でその場から駆け出したのだった。

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