蜜月なカノジョ(番外編追加)

ナオさんは私が極度の男性恐怖症だということを知っている。

私をそこまでにする原因となった男達の中には女装をしている人もいた。
最初に就職した会社からの帰り道、すれ違おうとしていた女性が突然スカートを捲り上げた。女性だと信じて疑わなかった私はどうしたのかとふとそちらの方へと目を向けた。
けれどその先でニヤリと笑ったその人物が握っていたのは……。

それ以上思い出すのがおぞましくて必死で首を振る。
既に男性に対する恐怖心でいっぱいだった私にとって、その出来事はかなりのショックを与えた。ただでさえ周囲の異性に対してビクビクした生活を送っていたというのに、これからは一見女性に見える人にまで警戒しなければならないのかと愕然としたからだ。
いつどこで自分を狙っている変質者がいるかわからない。
その現実はこの上なく私を打ちのめした。

そんな私のガチガチになっていた心を少しずつほぐしていってくれたのは…他でもないナオさんだった。出会った頃は男性恐怖症どころか人間不信にすら陥っていた私を、時間をかけてここまで前向きにしてくれたのはナオさんとの出会いがあったから。

それなのに。それなのに___

嘘、だったの…?
騙してたの…?

私が男性恐怖症だから。
だから女のフリをしてたの?
…でも出会った時にはもうナオさんはナオさんだった。

……わからない。
頭の中がぐちゃぐちゃで、もう…誰を…何を信じればいいのかわからないよ…

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