蜜月なカノジョ(番外編追加)


「あ…」

リビングに入ってすぐに大きな変化に気付いて足が止まる。
そこにいるのが「いつものナオさん」だったから。

さっき私を助けに来てくれたナオさんは、私の知らない…つまりは「男」のナオさんだった。きっと私を追いかけるために、あの時の私と同じで着の身着のまま飛び出したのだろう。その証拠に、これまで一緒に過ごした半年の間、一度だってTシャツに短パンだなんていうラフな格好を見たことがなかったから。

いつだって綺麗で完璧だったナオさんが、あり得ない格好をして髪の毛を振り乱して。そこまでして私を追いかけて来てくれた。
もしこっちのナオさんが「本当のナオさん」だったのだとしても、これまで隠し続けてきたことを見られてしまうのを躊躇いもせず行動してくれたことを…心のどこかで嬉しいと思っている自分がいる。

「ほら、座って? 髪の毛乾かさないと風邪ひいちゃう」

立ち尽くしたままの私に苦笑いすると、髪も洋服も全てがいつも通りのナオさんは、私の手を優しく引いてソファーに座らせた。そうしていつものようにドライヤーをかけ始める。帰りが早いときには必ずこうやってナオさんがドライヤーをかけてくれる、それも私達の「日常」だった。

いつもいつも、私に触れる手は蕩けるほどに優しい。
今だって、直前にあんなことがあったなんて信じられないほどに何一つ変わらない。

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