蜜月なカノジョ(番外編追加)

惑い揺れる乙女




「可愛い靴があってよかったな~」

袋を手に顔も心もホクホクだ。今日は久しぶりにデパートでお買い物。
仕事で履く靴を探しに来たのだけれど、ふと目についたリボンをモチーフにした可愛らしいパンプスに目が留まった。カフェでは基本動きやすさが重視される。だからパンプスなんてまず選ばないのだけど…女の子らしいフォルムと色合いに何故だか心惹かれてしまった。

でも目的は仕事で必要な靴だから!と、とりあえず仕事用のぺたんこ靴を買って店を出たはいいものの…やっぱりあの靴が忘れられずに10分もしないうちに戻ってしまった。
そこから悩むこと約1時間。半分呆れ笑いの店員さんの痛い視線を感じつつ、結局私はその靴を買うことに決めた。
あんなに自分から欲しいと思って物を買ったのは初めてのことかもしれない。

男性恐怖症になってからというもの、専ら身につけるものは露出度の低さや動きやすさを重視して選んできた。だからパンプスなんてOL時代に仕方なく履いてたくらいだし、それもローヒールのものばかり。そうでなければいざと言うときにダッシュで逃げられないから。
我ながらなんて悲しい人生なんだと思うけれど、実際犯罪に巻き込まれずに生きて行くには自らそういう防衛策をとるしかなかったのだ。

そんな私がこんな女の子女の子したパンプスを買うなんて。しかもヒールは6センチ。ぺたんこが当たり前の私にとっては規格外もいいところ。
明日季節外れの雪が降るんじゃないかと思うほどに自分でもびっくりだ。

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