百花繚乱 社内ラブカルテット
反射的に辺りを見回して初めて、私はここが自分の部屋じゃないことに気がついた。
部屋が随分と暗いのは、この部屋に窓がないから。
私が寝ていたのが、部屋のど真ん中に置かれたダブルベッドというのを見れば、ここがどこだかはわかる。


「ホテル……? なんだ」


無意識に呟きながら、私は一度ホッと息をついた。


なんてことはない。
昨夜は私、彼とデートの約束をしていた。
アフターファイブにディナーの約束だったけど、その時飲みすぎたんだろう。
それで彼が私をホテルに連れてきた……ってとこ?


この状況に対して自分なりに解釈を進めながらも、得体の知れない不安が胸にジワジワと滲み出してくるのがわかる。


だって、タクシーでどちらかの家に帰れないほど、私酔ってたってこと?
付き合うようになって一年経つけど、こういう時でもラブホに宿泊したことなんて、今まで一度もなかったじゃない。


と言うか……本当? 私昨夜、本当に彼とデートだった?


自分自身に問いかけてみた時、毛布の中から『ん……』とくぐもった小さな呻き声が聞こえてきた。
途端に私は全身を強張らせ、恐る恐る自分の腰元に視線を落とした。
毛布がモゾッと動くのを見てギョッとして、お尻を浮かせ後ろに飛び退く。
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