春色のletter
諏訪山ワインの本社に着いたのは約束から2時間遅れだった。


受付の女性に名前を告げた。


「確かお約束の時間は過ぎていると思いますが」


「はい、申し訳ありません。私のミスです。なんとかお取り次ぎをお願いできませんか」


「申し訳ございませんが、社長は既に外出しております」


彼女は、こちらのミスなのに頭を下げた。


「あ、では、いつお帰りになられますか?またその時間に伺います」


「申し訳ございません。本日は戻らない予定となっております」


「…そうですか。では、あらためて伺います」


私は深く頭を下げると、受付に背を向けた。


「あの…」


彼女の声に、私は振り返った。
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