春色のletter
そのまま駅に戻りかけたけど、せっかく来たのだからその辺を歩くことにした。
雑踏の中を歩いていると、ふとハルの幻影を見ている自分に気が付いた。
本屋の店先で立ち読みをするハル。
カフェで珈琲そっちのけで絵を描くハル。
人を観察をするように歩くハル。
雑貨屋の中で変なモノばかり手に取るハル。
いろんなハル。
ここで生活をしていたハル…
彼ならきっとこんな感じだっただろうと、私はその幻影を見ていた。
その隣に誰かがいたか……は、わからない。
でも、彼はこの街で生きていたのだ。
今、私がここにいることが、心を触った。
今はもういないのに、ここを離れたくなかった。