春色のletter
第2章 高校の頃
桜が見事に満開の日、私は福岡県立夜宮(よみや)高校へ入学した。


晴れ渡った空にも助けられて、友人の谷口絵里の心は希望に溢れて、笑顔がこぼれっぱなしだった。


「絵里、顔が締まってない」


「だってぇ夜梨ぃ、仕方ないじゃ~ん」


ほっぺを両手で包んで、にこにこ…いや、ニタニタしながら私の横で揺れていた。


「じゃあ、帰るわよ」


そんな雰囲気も無視して、母が容赦なく言った。


「はあい」


私が母の後を追いかけると、谷口親子も、にこにこしたまま付いてきた。


まあ、家がほとんど一緒のところだから。


絵里のお母さんが、颯爽と歩くうちの母に追いつくと、うれしそうに何やらどうでも良いことを話しかけていたが、母はいつものように律儀に受け答えをしていた。


傍目には、相性が悪そうなこの二人だけど、私と絵里が小学校の頃からの友達なので、ずっと付き合っている。


その表情からは読めないけど、うちの母も意外と避けてはいない。


不器用なだけ…


最近はそう思う。
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