美称・臥龍 喬子の生き様
第二の スカウト
今日は、休日。





喬子は、慎平と愉しいときを過ごす。

いつもの プライベートな地味な装いで。






ふたりでお喋りしながらぶらぶらと歩き
靴屋が見えたとき、

新しいハイヒールが欲しくて、
でも、
仕事の事を まだ慎平に告げていない喬子は、
なんとなく 目の前で派手なハイヒールを買うことに 躊躇してしまい、無意識に ショーウインドウを見ながら通り過ぎた。

その視線に気付いた、慎平。


「女性は、あぁいう靴、好きだょねぇ」

「えっ?」

「喬子さんが履いたら、似合うだろなぁ」

「あ、あぁ…。。あの靴?…」


わざと濁す喬子に、慎平は、「見たいな♪」と言い、
喬子は、「あ…、そう?」と ぎこちなく応えながら、
慎平からのアシストのお蔭で、靴屋に入った。


そして、透かさず 慎平は、店員に尋ねながら、
喬子に
ショーウインドウのハイヒールの試着を勧める。





試着のとき、
喬子が、少し 顔を歪めた。


慎平は、直ぐ様 察して、喬子を気遣う言葉を掛ける。

初対面のとき、沢山話したなかで、足の怪我のことも聞いていたからだ。



「大丈夫?」

慎平は、そう言葉を掛けながら
うっすら残る傷痕に 優しく手のひらを宛がった。


「あ…」

不意に触られて、喬子は、びっくりした。
が、
怪我のことでの 他人からの 初めての優しさに
思わず 涙ぐむ。




“まさに… 手当て…。
あたたかい人肌こそ、効くわ…。。

ほんと…
慎平さんは… 優しい人だ…”






そして、

仕事中には、全く痛みを覚えなかったことも気付く。




“あっ…… そういえば……。。

相当… 気を張っているんだわ……私……”







「とても綺麗だ。凄く似合ってる」


「あ…、、。ありがとう」



サイズも合ったので、喬子は、
そのハイヒールに決めた。


クリスタルをあしらった、ピンクゴールドのハイヒール。




喬子が レジへ行こうすると、
慎平は、喬子の腕を 優しく掴み、引き止め、

「外で待ってて」
と、さりげなく言い、スマートにレジへと向かった。



喬子は察し、恐縮したが、
スッと行く慎平の後ろ姿に 思いやりを感じながら
言われるままに そっと店を出た。

心が あったかくなるのを噛み締めながら
脇に立ち 慎平を待つ。



すると、
スーツ姿の中年男性が、声を掛けてきた。

仕事モードの時ならば 色っぽく交わす喬子だが、
今は、プライベートなとき。

見知らぬ男性に 怪訝にしていると、
男性は、『芸能界に興味ないですか?』と。
そして、
『今日、あなたのような美人さんに出会えるとは思ってなかったですよ。少しでも興味が沸きましたら、是非!御連絡ください!御待ちしてます!』と、
喬子に名刺を手渡して その場から立ち去った。


喬子は、
妙な余韻を感じながら 手渡された名刺を眺める。



「お待たせ」


「あ、あぁ。慎平さん」

「ん?、どうかした?」

「う、ううん。どうもしてないよ」

「そっか。
はいっ、御姫様」

「え、ぇえ?」

「喬子さんは、僕の御姫様だから」


そう言って、
慎平は、豪華で可愛くラッピングして貰った さっき選んだハイヒールを
喬子に プレゼントした。


「わぁ…。。プレゼントしてくれるなんて…。
とっても嬉しい…。
ありがとう…慎平さん」



喬子は、
思いもしない出来事に
感動し、涙ぐんだ。










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