幸せの構図
「すーちゃんって可愛いですね」

「もう・・・りつこさんってば」

「はい、ごめんなさい。しっかりお話ししますね」

りつこは思った。覚悟を決めて話さなければならないのは自分なのだと。事実を単純に箇条書きで伝えるのではない。そこにりつこの思いが被さって脚色された言葉がどんな風に出てくるのか自分でもわからない。

愛している。愛されてる。確かな自信と誇りもウソではない。しかし今目の前にいるのはかつてひろし君と愛し合った人。そしてひろし君が20年以上も忘れ得なかった人。

その人の前でこれ見よがしに自慢げに話さずに、慌てずにいられるのだろか。さらにりつこの話しを聞いてどんな反応を示すのだろうか。その反応をりつこ自身がどう受け止めるのだろうか。

そんなりつこの思いを知ってか知らずか、その人は相も変わらず優しい瞳をりつこに向けていた。

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