三次元に、恋をした。
その掴んだ手を引き上げ成瀬さんの顔に持ってかれる。

あっ、……と思った瞬間の出来事だった。

チュッと いやらしくも響いた唇から溢れたリップ音。

そして私の手の甲に残る生暖かなしっとりとした感触。

「これはお近づきの印に、」

そう言って合わせた目線は憎たらしくも爽やかな笑顔で軽くウインクされた。

「……っ……この、ハレンチっ!」

捨て台詞のように吐いてしまったのは後の祭り。

思いっきり立ち上がり腕を振りほどいてその場を逃げるようにして走り去った。

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