Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


「本部にいじめてる気はないんだろうけどね。そもそも、支店の仕事を知らない人たちが検査するからダメなんだよね。
支店の事情とかなにも分かってない本部のひとたちが作ったルール押し付けられても無理だもん」

「本部は紙相手に仕事してればいいんだろうけど、支店は人間が相手だもんなぁ。
顧客によって対応も違ってくるし、それが正しいと思うけど、そういうイレギュラーな部分に本部はいちいち咬みついてくるから……まぁ、正直、鬱陶しいよな」

苦笑いで「そういえば、鶴野が監査部に怒鳴った時も、そこまで問題にされなかったもんな」と言われ、そんなこともあったなぁと笑う。

鶴野は、顧客の事情を踏まえて、上司に確認もとった上で行った処理内容を、監査部につつかれてしまい、その時に鶴野が言ったのが『なんでもかんでもルールと違うって文句言う前に、支店や顧客の事情を知る努力をしてくれてもいいんじゃないですか?!』だ。

熱くなってのうっかり失言に落ち込んだ鶴野を前に、『やっちゃったな』と苦笑いした宮地が追い打ちをかけていたのが懐かしい。

でも、本部にこそたっぷり怒られたものの……今も本部に出向くと、若干の塩対応をされているものの、支店内ではそこまで怒られずに済んだって話だ。

支店長も次長も、営業課長も『まぁ、気持ちはわかる。でも、社会人になった以上、あれくらいは我慢できるようにならないとな』ってくらいの注意で終わったらしい。

「あれ聞いたときには、私も鶴野が正しいって思っちゃったもん。……でも、まぁ、本部に刃向ったところで無駄だっていうのもわかってるし、もし、監査が入ったら、はいはいって従っとくよ」

諦めて笑うと、隣の宮地も「だなぁ」と同意する。
その横顔をこっそりと見上げた。


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