Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


「同じ会社ですよ。南支店だから合同で歓迎会したときに見ませんでした?」
「あ! やっぱり? いや、そうかなとは思ったんだけど……はー、やっぱりかー。すごくもてそうだよねー」

「小さい頃からあんな感じだから、言い寄られることが多いみたいですよ。つい最近も追いかけ回されてるの見たし」

疑惑の女の子を頭に浮かべる。
そして、そういえば……と自分の服装を見下ろした。

白いブラウスに、紺色のショートパンツ。足元は黒のパンプス。
日曜日見かけた女の子とまったく同じ服装だった。

仕事では黒の靴以外NGだし、わざわざ仕事用に靴を置いておくのも面倒だからと、職場でもプライベートでも使えるような靴を選んでいる。

思い出してみると、あの女の子も低いヒールのパンプスだった。

別に珍しいわけじゃない。
それでも、靴までかぶっていたことがなんとなく気になりながらスマホをバッグから取り出す。

涼太はいつも駅につくと、〝遅ぇよ〟とか送ってくるけど、確認しても未読のメッセージはなかった。
今日はまだ仕事が終わらないのかもしれない。

「追い回すって言えば、先月……もう少し前かな? 変な子をこの支店の前で見かけたのよね」
「変な子って?」

顎に拳を当てながら話し出した佐藤さんが「んー」と難しい顔で答える。

「唐沢さんと同じくらいの歳の子だったんだけど、私が帰ろうとしたら支店の前でキョロキョロしてて……ATMでも探してるのかと思って声かけたら、『あの、この支店に……その、何人くらいの……』ってしどろもどろな感じで話しかけられて」

「……求人とかそんな関係ですかね? この銀行に入りたいとかそういう……?」


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