それはちょっと
名前を呼んだ私に、
「――やっぱり、君はかわいいよ」

部長が言った。

「――なっ…!?」

私の頬が熱を持ったのは、気のせいだろうか?

「もっと君が欲しくなる」

そう言った部長の手が私に向かって伸びてきたけれど、
「バカを言うのはやめてください!」

パシッと、私はその手を振り払った。

「帰ります!

お先に失礼します!」

早口でまくし立てるように言った私に、
「また明日ね」

部長はそう言って微笑んだ。

その顔に、私の心臓がドキッ…と鳴った。

何を反応しているんだ、私は。

部長が気づいたのかどうかはよくわからないけれど、私は早足でオフィスから立ち去った。

見つめられて、キスされて、微笑まれたせいで、心臓がうるさい。

もう、これは一体何なのよ!?
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