君を愛した時間〜残した宝物
「よせ!もう…遅い」
「遅いって?!何だよ!どうゆう事だよ!?」
俺は、缶ビールを開けた。
「セラ……結婚するらしい……あの、直って奴と……」


――目を覚ますと私は、濃霧に囲まれていた……。
『ここは…どこ?…』
私は立ち上がり、前か後ろか右か左かも分からずに私は歩きだした。
どのくらい歩いただろうか……霧の中から小さな光を見つけた。
『光……』
私は、その光に向かって歩きだした。
『…セ…ラ…』
微かに霧の何処かで私の名前を誰かが呼んだ。
私は、立ち止まった。
『…誰?…』
辺りを見渡しても誰の姿も見えない…。
『…セラ…』
《はっ!!》
後ろを見るとさっき迄小さな光が、大きくなって霧の向うに、ぼんやりと人の姿の影が見えた。
『誰なの?……』
私は、人影の方に歩きだした。
『…セラ』
《!!》
『この声…心?…心なの?!』
『セラ…』
『心!?心でしょう!?』
霧の中の向うから手が伸びてきた、私はその手を強く握った。
『心!!もう、この手を放さない!…私の手も放さないで…何処にも行かないで!ずっと私の傍に居て!!心…』
私の目から涙が零れ落ち、落ちた涙が握った手に落ちた。



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