君を愛した時間〜残した宝物
「心君…君に話がある…」
松村先生は、まっすぐ俺の眼を見て言った。
「…なんです…か…」
「心、別の場所で話そう…」
直は、俺の腕を掴み病室を出た。





松村先生と直の話しは、残酷だった……。

癌は……セラの身体を蝕んでいた……。

……お腹の子も弱っている……このままセラのお腹に居させる事は出来ない……。

月足らずの早産には、大きな問題が有るかもしれないと……。



病室に戻った俺は、ベッドで眠るセラに向かって話をした。
「…セラ…もうすぐ俺達の赤ちゃんと会えるぞ…うれしいだろ?…」
セラの冷たい手に俺は息を掛け摩った。
「…なん……で……グッ…なんで言って…くれなかった……もしセラを失う事に…なるな…ら俺は…」
≪!?…≫
一瞬、セラの指がピクッと動いたように感じた俺は、セラの指先を見つめた。

「…セラ?…聞こえるか?セラ?!」
俺は、セラの髪の毛を撫でた。
「セラ?!」
「…………で……」
≪!!≫
セラの唇はマスクの中で微かに動いた。
「セラ!俺だ!眼を開けて俺を見てくれ!」
俺は、強くセラの手を握った。
≪!!≫
セラの左手が弱々しく動きマスクに手を掛けた。
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