先生って言う名前の人

財布


それからあたしはわからないところがあったら全部先生に教えてもらった。


埋められない問題を福野先生に見つけられても、
塾の先生に教えてもらうと言った。


先生に勉強を教えてもらうときは、距離が近くていつもどきどきした。


ある日、仕事が立て込んでなかなかご飯を食べに来られなかった先生におばあちゃんが電話して、先生は来てくれることになった。


家に帰っておばあちゃんとご飯を作ってると、インターホンが鳴った。


先生はもうずっと、インターホンを押さない。


「はい」


おばあちゃんが先に玄関に出て、あたしも廊下でドアの外を見ると、

福野先生が立っていた。


「華さんの副担任の福野です。
教室にお財布が落ちてたので、、」


そう言った福野先生は目線を上げると、あっ華ちゃん、とあたしを見つけた。


「まあ、華ちゃんお財布落としてたって!
気付かなかったの?」


どうやらあたしは教室に財布を落としたことを気付かずに家まで帰って来たらしい。


「全然気付かなかった、、
ありがとうございます」

お礼を言うと、福野先生はにこっと笑って言った。


「おっちょこちょいだな」

「華ちゃん気をつけないとダメよ。
先生、ありがとうございます」


そう言ってあたしとおばあちゃんは、福野先生を家の前の道まで見送った。

< 137 / 199 >

この作品をシェア

pagetop