天神の系譜の奇妙なオムニバス

忠義

「やれやれ…」

血でベットリと汚れた空手着を見下ろす。

「また空手着新しくしねぇといけねぇな…オフクロ作ってくれっかな…こないだ新調したばっかなのに…」

リュートはぼやきながら立ち上がろうとするが、魔力の消耗と出血のせいが、力が入らない。

と。

「ヒノモトの縫製はしっかりしているし、血痕も落ちやすいですよ」

古奈美がリュートを支えた。

「何とか手配してみましょうか?ヒノモト製の道着」

「…助かるわ」

顔を見合わせ、笑うリュートと古奈美。

「いい雰囲気の所、悪いんだけどさあ」

やっと意識を取り戻したのか、ベルが2人に声をかけた。

「私も肩貸してもらえると嬉しいなぁ~?」

「あっ!」

照れ臭さも相俟って、咄嗟にリュートから手を放す古奈美。

「いでっ!」

体勢を崩したリュートは転倒し、廊下で後頭部を強かにぶつけた。

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