天神の系譜の奇妙なオムニバス
「……」

扉のほんの隙間から、リュートをジト目で見る古奈美。

しばし考え、少しばかり扉を握り締めるが。

「うううううう…」

泣きべそをかいて、恨めしそうにリュートを睨む。

「恥ずかしいですよう…ヒノモトにはそんなお風呂なかったですもんんんんん…」

俺はアマリリスと大浴場で鉢合わせした事あるけどな、とか思うリュートだが、まぁ言わない方が話がこじれなくていいだろう。

「ま、まぁ」

リュートは苦笑いする。

「別に無理して一緒に入らなくていいんだって。俺も湯治に勧められただけだし。古奈美は後でゆっくり温泉入ればいいからさ。外で待っててくれよ」

今も目をウルウルさせてこちらを睨む古奈美に背を向け、リュートは温泉の方へと歩いて行った。

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