【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


『……ねぇ、何しているの?』


第一印象、お人好し。


雪の日に、外に立っていると、手に持たされた傘。


『別にええよ?家、ここやし』


『駄目だよ。なにか用事があって、立ってるんでしょ?傘、あげるから。体な冷えないように……あ、そうだ。これも、あげる』


首に巻かれた、マフラー。


『……あんたが、風邪引く』


されたことのない親切に、思わず、目を見開いてしまい、お礼ではなく、そんなことを言ってしまった。


すると、彼は笑って。


『大丈夫だよ。家、すぐそこだから』


自慢ではないが、京子が立っていたのは、本家の大門である。


玄関ではない。


つまり。


中にある玄関にたどり着くのにも、車必須。


そんな家がある回りには、勿論、特に一般人の家はなく。


彼の言葉も、大嘘だった。


大嘘だって、分かった。


笑顔で嘘をついてまで、私にマフラーを貸す。


そんな彼が、おかしくて。


『ふふっ……』


久しぶりに笑ってしまった。


『あ、笑った。笑顔、似合うね』


そんな私を見て、嬉しそうに笑った彼。


人と関わることが少なかった私は、


彼の笑顔が眩しく見えた。


『僕は、森野悠仁(もりの はるひと)。君は?』


その言葉、動作が意図的だったのかは、分からなかった。


普段なら、こんなことはしないのに。


気づけば、口を開いてた。


『京子や。御園京子』


『京(きょう)ちゃんか、宜しく』


笑顔にほだされた?


そんな、バカな。


人に気を許さなかった、私の心にすんなりと入ってきた男。


これが、悠兄(はるにい)との出逢い。


< 158 / 759 >

この作品をシェア

pagetop