【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「……薫たちの、ところへ行こう」


話してくれる、彼はそう言った。


「ん……」


ぐちゃぐちゃになってしまった顔は、上げられず。


私はとりあえず、頷いた。


そんな私を、強く、抱き締め。


合わさる額が、温もりをくれる。


交わる呼吸が、熱を生む。


抱き締められるまま、私は身を委ねた。


「帰るぞ」


すると、問答無用で抱き上げられ。


「……また、軽くなりやがって」


ハッキリと見えた、彼の顔。

不機嫌なそれは、抱き上げられたことで、近くて。


「…………歩ける、よ?」


絞り出すように、そう言えば。


「阿呆。そんな震えたまま、どうやって、歩くんだよ」


呆れたように、返される。


< 213 / 759 >

この作品をシェア

pagetop