【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……相馬?」


「ん?どうした?」


首にしがみついていた沙耶が、声を発した。


声が震えてない辺り、だいぶ、落ち着いてきたらしい。


「どこに、向かってるの……?」


気丈な女。


どんなときも冷静で、慌てることなどない女。


そんなイメージが強い沙耶が、泣いて、震えて、俺を頼る。


沙耶が怖がっているというのに、それだけで、歓喜に震えてしまう、俺の心。


「雪さんのところだよ」


ビクリ、と、沙耶が身を強張らせる。


そういえば、あの時から、一度も会っていないのだった。


「雪さんに会うの、怖いか?」


そう、訊ねれば。


「……少しだけ」


沙耶の本音を見抜いた、数少ない相手。


覚悟していなかったぶん、沙耶は混乱したけれど。


「今は、どういう人なのか、分かるし」


そう言いながら、沙耶の腕には力がこもる。


「そうか。まぁ、俺がいるから」


「ん。……信頼してる」


何度も、何度も、抱き合って。


キスして、これ以上はないと言えるくらいに、俺達は解け合って。


仮の恋人なのに……何をやってんだと、自分でも思う。


けど、止められないのが、恋というもの。


人を、愛すということ。

< 216 / 759 >

この作品をシェア

pagetop