【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
■蒼生side□




異常だと言えば、異常な光景。


「……母さん」


先頭に立ち、巫女を率いる月姫を見て、瑛醒が……いや、瀧がそう呟き、


「……沙羅、でもあるな」


笑いながら、流霞……弓を見る。


「……御元気そうで、何よりですね」


「…………死んでるけどな」


「フフッ、確かに」


目の前の地獄絵図でも、二人は笑いあう。


……可笑しな、恋人同士である。


「まぁ、姫が出てきたのなら、すぐに終わるな」


「……おい、おめぇら。手当てしてやるから、部屋に入れ」


暁良さんがそう言って、瀧は“月華”を手に、俺達を振り返る。


「一気に治してぇから、大部屋なー」


巫女達を放って、俺らは部屋に入る。


果たして、それが許されるのか?


「……そなたらは、今はただの人間じゃ。瑛醒の言う通り、部屋に入れ。妾達は……やることをやったら、一時的に、それぞれの身体に還るから」


足が縫い付けられたように動けなかった俺達に、月姫は微笑んだ。


「……お前たち、沙耶を気遣え」


「え……?」


その一言を忘れないように、俺達の背中にそういったのを俺達は聞き逃さなかった。


この時、巫女たちや月姫が気付いていたことに、俺達が気づいていれば、あんなことにはならなかった。


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