【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「どうか、幸せに……か」


おもに相馬に宛てられたであろう、その言葉を呟いて、甲斐は歩き出す。

相馬の側に、側近として戻る。


甲斐が今、沙耶を追いかければ、どうなるか。

あれが、沙耶の本心なら、余計なこととなり、嘘偽りの言葉なら、手助けとなる。

相馬が沙耶を想っていることは知ってる。

狂わしいほど、愛していることも。

だからこそ。

口は出さない。

それが、二人のためだ。

沙耶という存在で変わった、幼馴染み兼主。


甲斐は沙耶を本当に、すごい女だと思った。


相馬の笑顔の、全ての引き金となる女。


彼らの前世の恋も、すれ違いの末、死に別れた。


お互いを大事に思えば、思うほど、お互いを傷つける彼らの愛の剣。


俺は、鬼畜だと言われることはある。……失礼な話だが。
人は面白いと思う。
ころころ変える表情、醜さ、何もかもが、見ていて面白い。


例えば、こういう話だって、俺は嫌いな人間が相手ならば、愉悦に口元を歪めているだろう。


……けど、沙耶は魅せた。そんな俺でさえも。
守らなければならない女として、俺の視界に、心に、入ってきた女だった。


人を、老若男女、関係なく魅せる女。

今も昔も、変わらない。


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