【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「満月……すまんな、すぐ、終わらせたら、還るから。もう少し、頼むよ。可愛い息子たち」


柔らかく微笑んだ彼は、月姫にそっくりで。


「娘を連れて還るよ。次いでに、可愛い娘婿も。そしたら、祝福しような。皆で、おめでとうと言ってやろう。それが一番、みんなが幸せになれる方法なのだから」


すべてを理解している、神的存在。


「頑固なところは、そなたにそっくりだよ。玉華」


彼もまた、人を愛した。


人と神の血が混じった、禁断の娘を。


禁断の娘は剣を振るい、姫を務めて消えてしまった。


「初代のそなたがいなければ、次代は生まれなかった。そうすれば、月姫は幸せになっていたのだろうか」


月明かりが差す中、優雅な動作で歩き出す。


「けど、多分……」


彼が見上げるのは、桜の木。


大きな、大きな、桜の木。


この町に咲く、異世界への扉の入り口である桜の木。


囲う五本が満ち、共鳴したとき、異世界への扉は開く。


「儂も、そなたがいなければ生きてはいけなかった」


神は、愛す。


人は、愛す。


愛は、消えることがない。


どんな感情をなくしても、愛だけは。


それぞれの心で、輝くんだ。

神の威光すら、霞むほどに。


だからこそ。


それが愛から憎しみとなれば、それは、何よりも強い力となる。


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