【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「この話を聞いたとき、気になった私は……すぐに調べて、和子さんに直談判したわ。『なんで、こんなことをしたの』って。するとね、和子さんは笑いながら言ったの。『はるくんは?』……全く、人の話を聞いていなかった。聞こえていなかったの。心に、届いてなかった。嗚呼、もう、戻ることは不可能だ。甘えるだけ、甘えた結果、この人はもう、戻れないところまで囚われ、堕ちてしまった。……それから、数ヵ月後のことよ。和子さんが自殺したのは」


子供の知らないところで行われていた、裏物語。


父さんも、千華ちゃんも頑張った結果が、母さんの自殺と相馬の“崩壊”。


「……っ、ごめんな……京子……無力な父親で……すまない……」


小さな、小さな、存在。


私達が慕うことのできなかった、“影”とされてきた人は、こんなにも弱くて、不器用で、優しい人だった。


「……父さん、お疲れ様でした。これからは、御園の家で過ごすなり、自由に外に出るなり、お好きに生きてください」


今、ようやく、父さんの人柄が見えた気がする。


私が信じていた母さんは、父さんを深く、深く、傷つけた。


そして、母さんはこの家に深く、深く、囚われ、堕ちてしまった。


そんな、魔窟みたいなこの家で、沙耶は幸せになれるだろうか。


愛と憎しみの渦巻く、当主との戦いを終えた今、残るのは、自身と家との戦い。


決して、呑まれてはいけない、この家に。


堕ちてはいけないんだ。


自分達の足で踏ん張って、私達は家を守る。


誇らしくも、恐怖の存在である、この家を。


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