【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


コンコンッ……


「……相馬?」


ノック音とともに、戸が開き、俺は立ち上がった。


「久しぶりに、こっちに帰ってきたんでね。ちょっと、寄ってみたんだが……あの件も、ちゃんと、果たしたぞ。あとは、沙耶が目覚めるのを待つだけだ。あの件に関しては、お前の手があったからこそ、見つけられた。深く、礼を言う」


「いや、礼だなんて……俺は御園の力を使っただけですから。それに、あなた方の大切な娘である沙耶を、こんな風にしてしまい……」



礼を言われることはしていなかった。


その代わり、彼らの大切なものを傷つけてしまったので、俺は深く、頭を下げた。


でも、そんなことは、彼らにはもう、どうでも良いらしい。


「その事に関しては、沙耶の意思だろう?沙耶がお前に抱かれることを望み、出来た命を産むことを勝手に決め、とんずらこいたのは、俺に性格の良く似た、この娘だ。だから、沙耶が今、眠りについていることを俺たちは咎めない」


「そりゃ、最初は、どうしてって思ったわ。でも、今は、感謝しているの。20歳が限界と言われた、命を……沙耶は愛する人間の子供を産むことで、捨てようとした。沙耶にその選択権を与えてくれたのは、貴方よ。沙耶が惨めに死ぬことがなくて、良かった。私達はずっと、沙耶に希望を見つけてほしかった。そして、沙耶は希望を見つけるとともに、生きられなくても、生きたいと最期に願ってくれたわ。私達はもう、それで十分よ。可愛い孫は二人も出来たし、沙耶は先生と相馬さんのお陰で死んでいない。つまりは、目覚める希望もあるってことよ。だから、私からも礼を言わせて下さい」



心が広く、自由な、俺が愛した沙耶を産み出し、育んだ二人は、柔らかく微笑む。


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